2021年1月29~31日に早稲田大学国際会議場で開催された第85回日本温泉気候物理医学会のシンポジウムで、藤田康介(上海藤和クリニック中医科)先生による炭酸泉の足湯に関する講演の要旨集がありましたので御紹介します。その要旨は以下の通り。
「炭酸泉は中国でも広く分布しており、チベット高原や四川省西部では源泉温度が高めで、東部では温度が低めの炭酸泉が多く、飲用や浴療に活用されています。ただ、温泉があるエリアを除いて、中国では一般的に浴槽に浸かるという習慣はあまりありませんでした。そこで、日常的に発達してきたのが足浴の活用です。
中国の足浴は、単にお湯に足を浸けるだけではなく、様々な生薬を混ぜて効能を高める方法がとられます。足浴であれば、衣服を脱ぐ必要がないため、高齢者も子供も寒い冬に気軽に足浴が出来るというメリットがあります。2009年に流行した新型インフルエンザの治療ガイドラインでは、広東省で出された案では、体温38℃以上で発汗しにくい場合は、生薬粉末を足浴に使って発汗させる方法が作用されました。そこで、我々はインフルエンザの子供(4歳~15歳)を対象に人工炭酸泉に生薬麻黄の煎じ薬を混ぜた足浴治療を7シーズン行って調査したところ、唾液sIgA の有意義な増加、唾液BAPの増加傾向を確認し、全員が足浴5日以内に回復できました。
小児の上気道感染による発熱に対しては、中国でも多くの論文が出されており、足浴の解熱作用に関心が高く、効果が出ていることがわかります。足浴は、そのほかにも、足白癬など皮膚疾患から、月経痛・月経前症候群・睡眠障害・便秘などにも使われていて、応用範囲が広いことがわかります。日本では一般の人は生薬の入手が難しいので、高濃度炭酸泉で代用することも可能と考えられます。中国では保温機能やマッサージ機能が付いた高機能足浴機も発売されています。」
日本に比べて、中国では一般に足浴が身近な存在であり、広範囲な効能に利用されているようです。