足湯の効能に関する科学論文の紹介

~科学論文の調査項目について~

1.概論

足湯は、温泉や湯船に浸かることなく、足だけを温めることができる健康法で、その効能は多岐にわたります。

第一に、足湯による温浴効果が挙げられます。足湯に浸かることで、足の血管が拡張し、血行が良くなります。これにより、体内の老廃物や余分な水分が排出され、むくみの緩和や血流改善が期待されます。また、温かい足湯に浸かることで、全身の筋肉がリラックスし、疲労やストレスが軽減される効果もあります。

さらに、足の裏には身体の各部位や臓器と関連するツボが集中しており、足湯によってこれらのツボを刺激することができます。そのため、足湯は反射区療法の一形態としても利用され、さまざまな健康効果が期待されます。例えば、足湯をすることで、消化器官の働きが促進され、便秘や消化不良の改善につながるとされています。また、自律神経のバランスを整え、睡眠の質を向上させる効果も報告されています。

さらに、足湯には冷え性の改善効果も期待されます。特に冬場などに足が冷えやすい人にとって、足湯は有効な手段となります。温かい足湯に浸かることで、足の血行が良くなり、体温の低下を防ぎます。これにより、冷え性による体の不調や症状の軽減が期待されます。

最後に、足湯はリラクゼーション効果もあります。忙しい日常生活の中で、足湯に浸かることで心身をリフレッシュすることができます。温かい足湯の中で、静かにくつろぐ時間はストレスを解消し、心の安定をもたらします。そのため、足湯は心身の健康維持やストレス対策にも効果的な方法として利用されています。

尚、「足湯」と「足浴」の違いについては、英語ではFootbathですが日本語では微妙な違いがあります。

一般に「足湯」は、湯船に浸かるような形式の足浴です。通常、温泉地や健康ランドなどで提供され、大きな浴槽に足を浸けてゆっくりと温まることができます。足湯は、特に観光地やリラックスする場所で提供されることが多いです。 一方、「足浴」は、一般的な家庭や介護施設・病院等で行われる足のお手入れの方法として説明される場合が多いようです。足浴は洗面器やバケツなどにお湯を入れ、手軽に行うことができます。

したがって、足湯は通常、外出先や特別な施設で提供される足浴であり、足浴は一般家庭や医療施設等で行う足のお手入れ方法と言えますが、ここではすべて足湯という日本語に統一して説明させていただきます。

2.科学論文調査における分類項目

具体的の足湯の作用を分類すると以下のようになります。

足湯が睡眠の質に及ぼす影響

②足湯と心臓の健康

③反射療法と足湯療法

④足湯とストレス軽減

⑤足湯とリラックス反応

⑥足湯と自律神経系

⑦足湯と血液循環

⑧足湯と疼痛管理

⑨足湯と気分改善

⑩足湯と疲労軽減

⑪足湯と心血管の健康

⑫臨床実践における足湯療法

⑬熱療法と足湯

⑭足湯と心理的な幸福感

⑮足湯と糖尿病性神経障害

⑯足湯と関節炎管理

⑰足湯と筋肉のリラクゼーション

⑱足湯と免疫機能

⑲足湯と皮膚の健康

⑳足湯と高齢者の健康

㉑ 足湯と女性の健康

㉒ 足湯と疼痛緩和

㉓ 足湯と高血圧

㉔ 足湯と炎症の軽減

㉕ 足湯とメンタルヘルス

㉖ 足湯と伝統医学

㉗ 足湯と補完療法

㉘ 足湯とリハビリテーション

㉙ 足湯と予防医学

㉚ 足湯とウェルネスの促進

これらの項目について以下に科学的根拠に基づく論文を紹介したいと思います。

世界の足湯用入浴剤について

1.中国

日本よりも足湯が普及している中国で使われている足湯用の入浴剤には、様々な種類があります。

①花茶:中国ではよく、菊花、ローズヒップ、オオバコ、ジャスミンなどの花を茶葉と一緒に入浴剤として使用します。これらの花には、リラックス効果や美肌効果があるとされています。

②漢方・ハーブ:中国の伝統医学に基づくハーブを使用した入浴剤も人気があります。代表的なものには、ウコン、生姜、ミント、ラベンダー、アロエベラなどがあります。これらのハーブには、身体を温める、疲労回復、血行促進、解毒などの効果があるとされています。また、漢方薬バスソルトとして、高麗人参、生姜、アンジェリカなどの伝統的な漢方薬がブレンドされたものが利用され、血液循環を促進し、足の疲労や痛みを和らげるのに役立つと考えられています。

③ミネラル:泥や岩塩などのミネラルを含んだ入浴剤も人気があります。火山岩バスソルトは、火山岩に含まれる天然ミネラルと微量元素が含まれており、肌を浄化し、体を解毒するのに役立つと考えられています。また、海塩バスソルトはミネラルが豊富で、肌の角質除去と柔らかさを助けることができる海塩が含まれています。これらの入浴剤には、血行促進、リラックス、疲労回復、美肌効果などがあるとされています。

④発泡剤:泡立ちの良い入浴剤も一般的に使われています。これらの入浴剤には、リラックス効果や肌の柔軟性を高める効果があるとされています。

⑤その他:ミルクバスソルトは乳タンパク質が含まれており、肌に保湿と栄養を与える効果があると考えられています。また、アロマテラピーバスソルトには、ラベンダー、ローズ、ペパーミントなどのエッセンシャルオイルが含まれており、リラクゼーションを促進し、ストレスを和らげるのに役立ちます。

以上のような種類の入浴剤が中国で足湯に使用されることが多く、これらのバスソルトは、多くの中国の薬局、美容院、オンラインストアで見つけることができ、足湯に簡単に追加できる小さなパケットや小袋で販売されています。

2.韓国

韓国で使われる足湯用の入浴剤は、以下のような種類があります。

①ハーブ:韓国では、生姜、茶葉、オレンジ、レモン、ユズ、ローズマリー、ペパーミントなどのハーブを使用した入浴剤が一般的です。これらのハーブには、身体を温める、疲労回復、リラックス、ストレス解消などの効果があるとされています。

②ミネラル:海塩、岩塩、泥などのミネラルを含んだ入浴剤も韓国で人気があります。これらの入浴剤には、血行促進、デトックス、疲労回復、美肌効果などがあるとされています。

③発泡剤:韓国の足湯では、バブル発生剤を使用することが一般的です。これにより、泡が立ち、足の疲れを癒したり、リラックス効果を高めることができます。

④フラワー:韓国では、ローズペタル、カモミール、ジャスミン、ラベンダーなどの花を使用した入浴剤もあります。これらの花には、リラックス効果や美肌効果があるとされています。

以上のような種類の入浴剤が、韓国で足湯に使用されることが多いです。

3.台湾

台湾で使われる足湯用の入浴剤は、以下のような種類があります。

①ハーブ:台湾では、ローズマリー、ユーカリ、レモングラス、生姜、紅茶、玄米茶、オリーブ葉などのハーブを使用した入浴剤が一般的です。これらのハーブには、身体を温める、疲労回復、リラックス、ストレス解消などの効果があるとされています。

②ミネラル:台湾では、泥、海塩、岩塩などのミネラルを含んだ入浴剤も人気があります。これらの入浴剤には、血行促進、デトックス、疲労回復、美肌効果などがあるとされています。

③フラワー:台湾では、カモミール、ジャスミン、ラベンダー、オレンジフラワー、ローズなどの花を使用した入浴剤もあります。これらの花には、リラックス効果や美肌効果があるとされています。

④フルーツ:台湾では、グアバ、パイナップル、レモン、オレンジ、柿、梨などのフルーツを使用した入浴剤もあります。これらのフルーツには、リラックス効果や美肌効果、疲労回復などの効果があるとされています。

以上のような種類の入浴剤が、台湾で足湯に使用されることが多いです。また、台湾では、足湯によく「草本烏龍茶」が提供されることがあります。これは、台湾の高級茶である烏龍茶に、薬草を加えたもので、健康効果が期待できるとされています。

4.欧米

欧米では、足湯用の入浴剤は日本やアジアほど一般的ではありませんが、以下のような種類があります。

①エプソムソルト:エプソムソルトは、マグネシウムと硫酸を含む天然のミネラル塩で、肌を滑らかにし、疲れを和らげ、筋肉の痛みを緩和するとされています。

②ハーブ:ミントやローズマリーを含んだ入浴剤は、リフレッシュ効果があり、足の疲れを和らげることができます。ラベンダーを含んだ入浴剤は、リラックス効果があり、疲れた足を癒すことができます。シトラスのような柑橘系の香りを含んだ入浴剤は、リフレッシュ効果があり、疲れた足を癒すことができます。

これらの入浴剤は、ホームセンターや薬局などで比較的手軽に入手することができます。また、一部のスパやリゾート施設では、足湯用の入浴剤を提供していることもあります。

そこで、中国、台湾、韓国、欧米、日本で利用されている足湯用入浴剤の特徴の違いについて、更に詳しく比較すると・・・

中国の足湯用入浴剤:中草薬を使用していることが多い
効能としては、疲労回復、冷え性改善、美肌効果などがある
香りは、中国の伝統的な香りが特徴的で、例えば、五香や桂花の香りがよく使われる

台湾の足湯用入浴剤:植物エキスを主成分としていることが多い
効能としては、リラックス効果、疲労回復、消臭効果などがある
香りは、フルーティーな香りや、ラベンダーなどのリラックス効果のある香りがよく使われる

韓国の足湯用入浴剤:海洋深層水を使用していることが多く、効能としては、疲労回復、皮膚の保湿効果などがある香りは、ハーブやフルーティーな香りがよく使われる

欧米の足湯用入浴剤:ミネラルや天然成分を使用していることが多い
効能としては、筋肉痛の緩和、ストレス解消などがある
香りは、フルーティーやハーブの香りが多い

日本の足湯用入浴剤:温泉成分を使用していることが多い
効能としては、血行促進、疲労回復、リラックス効果などがある
香りは、柑橘系やユーカリなどの清涼感のある香りがよく使われる。

以上の結果から、各国の足湯用入浴剤は、ほぼ日本と同様な種類の入浴剤が利用されていますが、日本に比べて中国や韓国では漢方・ハーブ系の入浴剤が利用され、欧米ではミネラル、ハーブ系、台湾では植物エキスやフルーツ系の入浴剤も利用されていることが特徴の様です。

日本で利用される足湯用入浴剤について

日本で使われる入浴剤は足湯にも利用されており、以下のような種類が知られています。

温泉成分:日本では、温泉地の名産品として、温泉成分を含んだ入浴剤が一般的です。これらの入浴剤には、肌を柔らかくする、血行促進、疲労回復、神経を鎮める、ストレス解消などの効果があるとされています。

ハーブ:日本でも、ローズマリー、レモングラス、セージ、ユーカリ、生姜、桜花などのハーブを使用した入浴剤が人気があります。これらのハーブには、リラックス効果、疲労回復、ストレス解消などの効果があるとされています。

ミネラル:日本でも、海塩、岩塩、泥などのミネラルを含んだ入浴剤が人気があります。これらの入浴剤には、血行促進、デトックス、美肌効果、疲労回復などの効果があるとされています。

発泡剤:日本でも、バブル発生剤を使用した入浴剤が人気があります。これにより、泡が立ち、足の疲れを癒したり、リラックス効果を高めることができます。

食品成分:日本では、グリーンティーやレモン、柚子、ハチミツなどの食品成分を含んだ入浴剤もあります。これらの入浴剤には、リラックス効果や美肌効果、疲労回復などの効果があるとされています。

以上のような種類の入浴剤が、日本で足湯にも使用されることが多く、また、足湯の施設によっては、季節限定の入浴剤や、地元の名産品を使用した入浴剤が提供されることもあります。

足湯の効果効能について

足湯や足浴は、足を温かいお湯に浸けることで健康や美容に良いとされています。そこで、主な効果効能について以下にまとめると・・・

①血行促進効果
足湯や足浴は、足の血管を拡張させ、血行を促進する効果があります。これにより、全身の血液循環が改善され、冷え性やむくみの改善に効果的です。

②自律神経の調整効果
足湯や足浴は、自律神経のバランスを整える効果があります。温度や湯量などの条件を変えることで、交感神経と副交感神経のバランスを整えることができ、ストレスや不眠などの症状の改善に役立ちます。

③疲労回復効果
足湯や足浴は、筋肉の緊張を緩和し、リラックス効果が得られます。また、血行が良くなることで、疲労物質の排出が促進され、疲れた身体を回復させることができます。

④ストレス解消効果
足湯や足浴は、身体が温まり、リラックス効果が得られるため、ストレス解消にも効果的です。アロマオイルや入浴剤を加えることで、精神的なストレスを和らげる効果があります。

⑤美容効果
足湯や足浴には、代謝が活性化され、老廃物の排出が促進される美容効果があります。また、足を温めることで、皮膚の保湿効果が高まり、角質を柔らかくすることができます。

⑥その他の効果としては、免疫賦活効果(NK活性の亢進)や頻尿の改善、睡眠の質向上、等が研究されており、ヒトの健康維持・増進に関するデータが広範囲に続々と蓄積されています。

このように、足湯・足浴を上手に日常に取り入れて、健康の維持・増進に役立てて生活することが大切です。

                                     

頻尿と足湯についての実証論文の紹介

介護施設では、入所者の夜間頻尿の回数を減らすことは大きな課題となっています。そこで、足湯・足浴の利用が夜間排尿の回数を減らし夜間睡眠効率が上昇し中途覚醒回数の減少により睡眠が良好化した実証試験を紹介します。

山梨県立大学看護学部 小林たつ子、他の発表論文

山梨県立大学看護学部紀要 Bulletin of Faculty of Nursing, Yamanashi Prefectural University 16, 1-9, 2014

目的:高齢者に足浴を実施し、以下の仮説を検証した。1)夕方の足浴により、午後から夕方にかけて貯留した浮腫傾向の水分が足浴の排尿促進効果により、入眠前に排尿され、夜間排尿量と夜間排尿回数を減少させる。2)足浴により睡眠効率が良好化するとともに、1)の成果も加わり夜間の中途覚醒が減少する。対象および方法:65 歳以上の女性7名に湯温40℃に踝骨の上10cm の湯量で10 分間の足浴を17 時に実施群と非実施群にランダムに割り付けcrossover design で実施した。結果および考察:夕方の足浴の実施により、眠前の排尿促進はしなかったが、夜間排尿量は有意に減少し、夜間排尿回数は0.5 回減少した。また、足浴実施群の夜間睡眠効率は上昇傾向がみられ、中途覚醒回数は有意に減少したことから、睡眠が良好化したといえる。以上のことから、本研究の仮説はほぼ検証できたと思われる。しかし、被験者が少ないことは本研究の限界である。

足湯による体温変化について

足湯の有用性に関して、興味深い発表がありましたので、御紹介します。


小笠原充宏・小笠原真澄 医療法人楽山会大湯リハビリ温泉病院


[はじめに] 温泉ブームを契機に、全国各地で気軽な健康 法として足湯が人気を集めている。足湯は、服 を着たまま何処でも手軽に行える、体全体が温 まり全身の血行が良くなる、循環系への負担が 少なく高齢者にも安心して行ってもらえるな ど、足湯は、誰でも何時でも気軽に楽しめる事 が人気を集める理由と考えられている。 足湯 を健康法の一つとして捉えるのであれば、その 評価方法を確立する必要があると考える。そこ で、当法人が運営する複合型介護施設において も、開設当初より、利用者の皆様に足湯を愉しむ機会を提供するとともに、前後の体温測定を継続的に行ってきたので、その分析結果を報告する。


[方法] 1.対象者 当法人が運営する複合型介護施 設の利用者男性 50 名、女性 143 名の計 193 名。 2.測定方法 施設内に設置された 42℃の足湯 に、20 分間下腿を浸からせ、その前後にオムロ ン社製電子体温計 MC-670 を用いて腋下体温を 測定した。


[成績] 3ヶ月以上継続して足湯を利用した方のデー タを使用して分析したところ、足湯によって体 温は平均 0.7℃上昇していた。 全データの分布 をみると、いくつかのグループに分けられるこ とから、更に分析を行うと、脳血管障害の既往 があるグループの足湯後の体温上昇が平均 0.4 度であったのに対し、既往のないグループは 0.8度上昇していた。


[考察] 脳血管障害の既往が、同条件下での体温上昇 抑制の要素であることが推察された。


日温気物医誌第 76 巻 1 号 2012 年 11 月
第 77 回日本温泉気候物理学会総会一般演題抄録 No.35

高濃度炭酸泉足湯の活用

2021年1月29~31日に早稲田大学国際会議場で開催された第85回日本温泉気候物理医学会のシンポジウムで、藤田康介(上海藤和クリニック中医科)先生による炭酸泉の足湯に関する講演の要旨集がありましたので御紹介します。その要旨は以下の通り。

「炭酸泉は中国でも広く分布しており、チベット高原や四川省西部では源泉温度が高めで、東部では温度が低めの炭酸泉が多く、飲用や浴療に活用されています。ただ、温泉があるエリアを除いて、中国では一般的に浴槽に浸かるという習慣はあまりありませんでした。そこで、日常的に発達してきたのが足浴の活用です。

 中国の足浴は、単にお湯に足を浸けるだけではなく、様々な生薬を混ぜて効能を高める方法がとられます。足浴であれば、衣服を脱ぐ必要がないため、高齢者も子供も寒い冬に気軽に足浴が出来るというメリットがあります。2009年に流行した新型インフルエンザの治療ガイドラインでは、広東省で出された案では、体温38℃以上で発汗しにくい場合は、生薬粉末を足浴に使って発汗させる方法が作用されました。そこで、我々はインフルエンザの子供(4歳~15歳)を対象に人工炭酸泉に生薬麻黄の煎じ薬を混ぜた足浴治療を7シーズン行って調査したところ、唾液sIgA の有意義な増加、唾液BAPの増加傾向を確認し、全員が足浴5日以内に回復できました。

 小児の上気道感染による発熱に対しては、中国でも多くの論文が出されており、足浴の解熱作用に関心が高く、効果が出ていることがわかります。足浴は、そのほかにも、足白癬など皮膚疾患から、月経痛・月経前症候群・睡眠障害・便秘などにも使われていて、応用範囲が広いことがわかります。日本では一般の人は生薬の入手が難しいので、高濃度炭酸泉で代用することも可能と考えられます。中国では保温機能やマッサージ機能が付いた高機能足浴機も発売されています。」

日本に比べて、中国では一般に足浴が身近な存在であり、広範囲な効能に利用されているようです。

足湯・足浴に関する文献レビュー、総説の紹介

「足浴の効果における実験プロトコールに関する文献レビュ-」                               北海道科学大学研究紀要 第41号(平成28年)研究報告 p1-6, 秋山雅代

【要旨】本研究の目的は、温浴効果を高める目的で足浴を併用したシャワー浴の効果を検証するため、 国内外の足浴の実験プロトコルに関する研究の文献レビューを行い、今後の課題を検討すること である。レビュークエスチョンを「足浴の温浴効果はどのような手順で検証されているか」とし て文献検討を行った。医学中央雑誌 Web 版と PubMed で「足浴」「footbath」をキーワードとし文 献検索を行った結果、14 件の国内文献と 12 件の国外文献が分析対象となった。その結果、足浴 効果は臨床施設において継続的に検証されており、医師、コメディカル職、看護職が多角的な指 標を用いて全身の効果を説明していることがわかった。温浴効果の持続性の検証では、実験環境 と使用する物品を検討する必要がある。また、再現性において、臨床で実施されている足浴方法 の実態をふまえて、体温変化の生理学的根拠をもとにした実験プロトコルの作成が課題であると 考えられた。

足浴実験の測定項目
客 観 的 評 価 項 目
生理的効果指標 循環系:血圧・心拍数・R-R 間隔・脳循環・ 心機能(左室駆出分画・左室 1 回 拍出量) 温度:深部温(腋窩温・鼓膜温・直腸温)皮 膚表面温度・サーモグラフィー 神経系:自律神経活動指標 (LF・HF・LF/HF) 運動機能:複合的動作能力(TUG) 動的バランス能力(FRT) 筋硬直・足関節背屈角度 足底荷重最大値・歩幅 その他:唾液中ストレスマーカー・ 睡眠 PSG 検査・ 心臓足首血管指数(CAVI)・ 手背発汗量・活動量

主 観 的 評 価 項 目
VAS(創部痛の強度) STAI(状態不安) POMS(気分プロフィール検査) オリジナル疲労評価 ※ オリジナル睡眠評価 ※ 睡眠調査表 快適度(フェイススケール)

【コメント】足浴の実験プロトコル のまとめとしては、

1)湯の温度 足浴の湯温は38℃~42℃の範囲で設定され ていた。

2)浸漬部位(水位) 足部の浸漬部位(水位)は、足踝上部、外 踝部上 5cm、下腿、膝蓋骨上、膝蓋骨中央 から下 15cm、水位 15~20cmであった。

3)所要時間と姿勢 足浴の実施時間は 10 分~20 分の範囲で設 定されているものが多かった。

4)実験環境 足浴の実施場所は屋外 1 件の他は、病室 実験室、施設内アトリウム、健康センター集 会所であった。

 

「足湯でリラックス♨」日本経済新聞 SUNDAY NIKKEI 2014年(平成26年)3月2日(日曜日)

「足湯」の有効性については、日経新聞2014年3月2日の日曜版に掲載された「足湯でリラックス」の記事でコンパクトにまとめられています。

①リラックス効果「ぬるめのお湯で足湯をすると、副交感神経の働きが高まり、リラックス効果が得られる。」

副交感神経は体の機能を無意識に調節する自律神経の一種で、休息時などに強く働くことが知られています。帝京平成大学の上馬場和夫教授は、被験者15人を対象に炭酸泉で30分間の足湯をした結果から、自律神経のうち活動するときに働く交感神経が抑えられ、副交感神経が活性化することを示しました。特に、炭酸入浴剤の利用でリラックス効果が高まるそうです。

②不眠の解消 「寝付きを良くする効果」

 足が温まり交感神経の働きが弱まると、胴などの体幹の温度が下がり寝付きやすくなることを指摘されるのは、京都看護大学学長の豊田久美子先生。就寝前に足湯をし、湯冷めしないように足を良く拭いてから寝ることが大切のようです。ショウブなどの薬草エキスを湯に入れると更に効果が高まるそうです。

③免疫機能の向上 「足の血管が温められて血流が良くなり、免疫細胞NK細胞が活性化」

豊田先生は、被験者10名に足湯20分間後の血液中の免疫細胞の活性を調べ、免疫をつかさどるリンパ球の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞の活性が7名で上昇している結果を報告しました。NK細胞は、文字どおり生まれつきの殺し屋で全身をパトロールしながら、がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第攻撃するリンパ球です。足湯のみでもカラダ全体の免疫機能を上げることが出来るとは驚きです。

④高齢者の転倒防止 「足の関節や軟骨、筋肉が温まって柔軟性が増す効果」

藍野大学の本多容子教授は、足湯が高齢者の転倒防止に役立つことを見つけました。ヒトは加齢とともに関節が固くなり、バランスを崩した時に転びやすくなります。そこで、70代の女性20名を対象に10分間づつの足湯をした結果、関節・軟骨・筋肉が温まり以前よりつま先を反らせる角度が大きくなり、つま先の柔軟性が増してることが示されました。

【様々な効果が期待できる正しい足湯のやり方】

 

・自宅で足湯をする場合、時間は7~20分が目安。疲れを感じない範囲で無理なく。汗ばんできたら終えるのが目安。

・容器は15リトル容量の丸いバケツ、窮屈な人には専用の足浴器(フットバス)がおすすめ。

・適温は38~42℃、高齢者は41℃以下で。リラックスしたい人や寝つきを良くしたい人はぬるめの湯、血行促進効果を期待するなら熱めの湯を使う。但し、熱めの湯は心拍数が上がりやすいので、高齢者や循環器系の病気を持つ人は注意が必要。

・保温効果を増すには容器まるごとビニール袋で包むと良い。温まりたい人は湯を多めに入れ、時折差し湯をして湯温を保つようにする。

・気分転換には、好みに応じて炭酸入浴剤やアロマテラピー用のエッセンシャルオイルを入れると気分転換になる。

                                     以上